Small Bowel Obstruction(SBO)は手術後の癒着性が最も原因として多いですが、臨床ではたまに「開腹歴のない」小腸閉塞に出会うことがあります。その鑑別診断についてまとめてみました。
鑑別診断
- 手術歴の見逃し
- 閉鎖孔ヘルニア
- 内ヘルニア/鼠径ヘルニア
- 小腸軸捻転
- 索状物によるもの
- 腹膜垂
- 腸炎/虚血性腸炎による狭窄
- 腫瘍
- 腸重積
- 上腸間膜静脈血栓症
- 食餌性
いくつかの症例報告をみると上記の鑑別が上がっていました。特に気になった鑑別について少しまとめてみました。
手術歴の見逃し
個人的には最も注意すべき鑑別だと思います。昔行った手術については患者さん自身、家族も忘れていることが少なくありません。よーく見てみると、右下腹部に小さい手術痕があり、「そういえば盲腸の手術をしたことがありました、、、。」といった事も少なからず経験します。問診で手術歴の有無を確認したとしても、かならず腹部診察で手術痕の確認が必要です。
索状物による小腸閉塞
索状物による小腸閉塞というのは一般的に術後の癒着で生じることが多いと言われています。ただ、開腹歴がない場合であっても索状物による小腸閉塞というのは一定数存在するようです。原因ははっきりしていませんが、外傷、腹腔内の炎症の波及、大網の虚血・微小血栓等の「何らかの炎症」により大網等の腸間膜から形成されると推測されています。
腹膜垂炎
腹膜垂というのは0.5-5cm程度の脂肪・血管を含む構造物であり大腸に存在します。それが捻転等により炎症をきたすことがあり、腹膜垂炎と言われます。炎症を引き起こすことでその他の大網と癒着し索状物を形成することがあり、これが癒着性小腸閉塞の原因となることがあります。
内ヘルニア
腹腔内にある隙間に腸管が入り込むことにより腸閉塞を発症します。傍十二指腸ヘルニア、大網裂孔ヘルニア、子宮広間膜ヘルニア等が原因としてあがります。
腫瘍
脂肪腫による腸重積、小腸癌による閉塞がまれに起きることがあります。
参考文献
- 日外科系連会誌 39(2):160–165,2014
- 日臨外会誌 77( 4 ),858―862,2016
- 日本腹部救急医学会雑誌 38(4):603〜607,2018
- 日臨外会誌 75( 6 ),1721―1725,2014
- Radiographics. 2005 Nov-Dec;25(6):1521-34.